2002/02/01UP
自然体でいこう
先日、久しぶりにスーツを着た。角田支局に赴任してしばらくは以前のスタイルで取材していたものの、 ほどなく普段着が仕事着に取って代わる結果になった。すっかりタンスの肥やしに成り果てたネクタイ、ワイシャツを掘り起こし、姿見の前で身にまとう。どうにもしっくりこない。まるで不恰好な七五三みたいだ。 わずか半年間、袖を通していないだけなのに、服が体に馴染んでいないのがよく分かる。洗いざらしにしていた髪を整え、どうにか格好をつけて外に出た◇支局駐在の生活では、仙台の本社に定時の連絡を入れるわけでもなく、 勤務状態の報告を求められるわけでもない。日々、パソコンで送信する原稿が勤務日報代わりだ。デスクからの電話がぱったり途絶える期間も珍しくない。ネクタイを外し、普段着で管内を飛び回る毎日に、 会社への帰属意識が薄れるのも当然だろう。半年ぶりにスーツに身を固めると、本社時代の緊張感すら蘇ってくるような気がして、自然と背筋がぴりりと伸びた ◇かといって、早苗振りのあぜ道で日本酒を浴びたり、野山で遊ぶ親子連れを追うような毎日の取材にスーツ姿はやっぱり「不謹慎」だ。普段着の自然体だからこそ聞ける話だってあるはず。形式ばらない日常会話の中にこそ、 すばらしい話題が転がっていることが多い。日々の生活に取材活動を染み込ませるだけで、ぐっと行動の領域は広くなる。そんなわけで、久しぶりのスーツは一晩だけで再びタンスの奥に眠ることになった。 カメラとノートとペンさえあれば仕事は十分。町の息遣いを敏感に感じとるのに、肩の張った服装はいらない。