2001/09/01UP


H2Aロケット

 ふわりと浮き上がり、一気に加速を増した白い巨体が、瞬く間に雲間に消える。 先日打ち上げに成功したH2Aロケット1号機。角田ロケット開発センターのモニター室でカウントダウンを聞いているだけで、 手のひらがじっとりと汗ばんでくる。 「大成功です。120点の出来栄えです」。興奮ぎみのテレビ解説に、 観客であるはずの私のもふっと力が抜けていくのが分かった。 国力の示威、軍事力の増強ー。かつて超大国間で繰り広げられたロケット開発競争を見てきたせいか、 ロケットにまつわるイメージはどこか常に政治色がただよっていた。 でも、今回の取材を通じ、今日のロケット開発の「推進力」が、まったく別次元にあることを思い知らされた。 それは「衛星打ち上げビジネスへの参入と成功」。ロケットは今や、前時代的な国家高揚、宇宙への探究心なんているロマンをこえ、 より冷徹な経済行為になっていたのだ。 そのことは、rポケットが性能や値段で顧客を奪い合うという、 1つの商品になったことを意味している。まさに車やコンピューターと同じような次元で、覇権でなく、 日本ブランドの商品として世界の商圏をねらうほどに、日常的なものになっている。 そんなことを考えていると、モニターに映る白い胴体が、一層輝いて見えてきた。 日本の技術レベルが世界でどの位置を占めるのかは知らない。でも、何かを破壊し、人を畏怖させるためでなく、 「経済」という平和的で、より苛烈な戦場へと道を切り開いていくロケットの噴煙に、素直に声援を送りたくなった。 残念ながら、モニター会場には子供の姿はほとんどなかった。新学期の時期だから仕方ないとはいえ、 研究施設を持つ地元にしては寂しい情景だった。多くの子供達が、臨場感をもってあの打ち上げの感動を味わえなかったのは残念でならない。