2003/12/01UP


悲しいニュース

 一年を振り返ればさまざまなニュースがある。政治、社会、経済、そして海外。 角田支局の管内、管外でもさまざまな出来事があった。大小数多ある中にあって、一番印象に残ったのは隣県の福島で起きた2つの事件だった。1つは通学途中の女子が拉致、 監禁されたもの。もう1つは一人暮らしの女性が自宅に押し入った3人組に暴行された事件。ともに嫌悪、嘔吐感すら催す卑劣な出来事で、被害者の心情の苦痛、屈辱感を思うとやりきない思いにかられるものだった。 ◇この2つの事件が記憶に残ったのは、犯罪の卑劣さはもちろんだが、1つの共通項が気にかかったからだ。被害者はともに女性。別に家出中でも、盛り場をうろついていたわけでもなく、いかがわしい交友関係もない。 何ら落ち度もない2人は、犯罪被害者になるリスクは限りなく低い。さらに現場は通学路と自宅。安全圏とも言える生活の中で被害に遭ったことに強い衝撃を覚えた。日常生活の中で、 突如として現れた悪意の陥穽に飲み込まれたようなものだ。「運が悪かった」なんて言葉では納得できるはずもないだろう。今、私たちが生きている社会が、弱者をねらい打ちにするような犯罪と共存しているという事実に ただ唖然とするしかなかった。◇こうなれば、どこにいても、どんな心構えをしていようとも、犯罪から逃れる術はない。絶対安全圏は既に崩壊した。そんな暗い直感、絶望感にすら襲われる。 三面記事に登場する人々とそれを見る側には、ほんの紙一重の差しかない。明日には自分がそこに登場しているかもしれない。どんな事件も決して人ごととは思えない。その意味で、この2つの事件の 被害者は、自分の肉親であり、恋人であり、友人でもあるのだ。今日はただ、自分の身内じゃない誰かが代わりに犠牲になった、ただそれだけのことでしかない。◇全国、世界で日々、悲しく、つらい出来事が 繰り返される。幸い、角田市内ではこうした大事件を直接取材する不運に見舞われることはなかった。来年もまた地域にとって平穏な年が訪れるよう、そして一人でも心引き裂かれるような人が生まれないことを 心から願ってやまない。