2003/10/01UP
まっすぐな視線の先に
先日、角田市の角田中で開かれた「少年の主張県大会」の会場に出向いた。 普通ならカメラ片手に気軽に出かけるところだが、この時ばかりはそうはいかない。弊社が共催ということもあり、社命で審査員を引き受けることになったからだ。 久々にスーツを着込み、恐縮しながら審査員席に着く。「こんな若輩者が人の採点だなんて・・」。現場で渡された大きな花飾りがうらめしい。中学生、父兄で埋まった中学校の体育館は、 残暑と人いきれで蒸し風呂のよう。そんな中、ただ1人冷たい汗が背中を伝った。◇「少年の主張」は中学生のそれぞれの体験に基づいた弁論術、その内容を評価するものだ。 各地の予選を勝ち上がってきた一人目の発表を聞き、開場時の緊張が後悔に変わった。5分程度の発表内容を原稿なしで通すのはもちろん、呼吸の間を置き、観衆を見渡し、 圧倒的な声量でぽっかり空いた静寂に意見を響かせる。1人ひとりの発表に、まるで熟成された質の高い1人舞台を見ているような錯覚に襲われた。 「高齢化に苦しむ故郷の役に立つ仕事に就きたい」「友人関係の中で未熟な自分に反省した」・・。発表技術の完成度はもちろん、テーマ設定、要旨も文句なし。いずれも優劣つけがたい。 社命とはいえ、のこのこと審査員席についた自分を呪詛した。◇各自テーマはさまざまだったが、その底流にはいずれも「絶え間のない自己点検」と「成長への強い意志」が感じられた。 角田の会場は技術的にもに内容的にも洗練された発表であふれたが、県大会に出られなかった生徒の作品にもきっとそれは貫かれていたことだろう。 鮮烈な生命力の一つの形。中学生の生徒全員に優等生的な発露を期待するのは無理だろう。時に誤った方向に迷うことがあるかもしれない。それでも、この大会を通じ、いつしか忘れてしまったまっすぐな視線、 一つの世代に滞留する力強いエネルギーを見せつけられたような気がしてならなかった。審査、表彰式を終え、会場を出る。入場時の冷や汗と気後れでべたついた気分が、いつの間にか爽快感に変わっていた。