2003/08/01UP


先輩記者の足跡

 7月10日、社内の先輩記者が亡くなった。一迫直文さん。本社報道部の副部長をしていた。 私から数えて3代前の角田支局長になる。46歳。突然の訃報だった。「行政」と「事件」に大きく担当分野が分かれていたから、 本社でも一緒に仕事をさせてもらった経験はない。居丈高な上司が少なくない中、はにかんだような笑顔が印象的だった。 人柄を詳しく知ったのはむしろ角田支局に赴任してからのことになる。「伊具地方の町おこしを本気で応援してくれた」 「何を頼んでも『いいっすよー』って気軽に答えてくれた」。離任からY年がすぎても、語り継がれるエピソードは少なくなかった。 ◇訃報を知った丸森の知人が本紙に投稿を寄せてくれた。その一部を抜粋させていただきたい。 「支局時代は一貫して、地道に頑張っている人々を紙面で応援し続け、多くの有益なアドバイスを提供し続けました。 今思えば、まちの活性化に頑張る人の傍らにはいつも一迫記者の優しい笑顔があったような気がします。 新聞記者としてでなく、人間性で『イッパクさん』の愛称で呼び、友達としてつきあわせて頂きました。 惜別の時、友情と感謝を込めてお礼を申し上げます。向こうからも、これまで同様応援してください。ありがとう」 ◇葬儀後、一迫さんの家族もかつて住んだ支局に帰り、「遺跡」と伝えられる家庭菜園の跡を眺めた。 以前、一迫さんが野菜でも作っていたのだろうか。雑草が生え、今は荒れ果てて見る影もない。 でも、角田市内には「イッパクの後輩」というだけ支局を支え、親しくおつき合いを願っている方々も少なくない。 たとえ畑はなくなっても、人脈を支柱とした一迫さんの≪取材フィールド≫だけは、不肖の後輩にもしっかりと受け継がれている。  イッパクさん。そちらの世界に新聞が届くかどうかは分かりません。それでも、伊具の里の現状をこれからも報じていくつもりです。 あなたが愛した人々の活躍を紙面で見守っていてください。