2006/03/01UP


格差社会

 ◆…最近の社会を読み解くキーワードとして、「格差社会」「下流社会」といった表現が盛んに用いられるようになってきた。 賃金カットやリストラ、なくならないホームレスの問題、生活保護受給世帯の増加…。一方、ホリエモン逮捕で冷や水を浴びせられたとはいえ、IT長者の隆盛はとどまることなく、一日で億単位の金を稼ぐデイトレーダーの存在もクローズアップされる。世情は明暗をくっきりと描いている。それが、不平等であるのかどうかという点は人によって見方が分かれるだろうが、事実として「差」の拡大は進む。「一億総中流」と言われた時代は過ぎ去ったといえよう。◆…身近なところを見回してみれば、暮らし向きが上昇した人は少なく、良くて現状維持、ほとんどがマイナスの方向に進んでいるように思う。商店街に活気はなく、まじめに商売をしていても大もうけは期待できない。農産物の価格は低く、大企業のサラリーマン並みに収入がある農家はどれほどいることか。正社員よりも給与が抑えられ、身分も不安定な派遣労働者やアルバイトばかりが増えていく。 未来は灰色がかっている。◆…若年層を中心に、自分を「下流」とみなし、「下流でも構わない」という風潮が広がっているという。お金がなくてもそれなりに楽しく生きられる。それはそうだろう。月収数万円でも、食べていくだけならさほど困ることもない。本当に困窮したときには親に頼ったり、社会的な扶助制度を利用すればいいという考えもあるかもしれない。◆…テレビを見れば、貧乏暮らしを面白おかしく取り上げたり、節約生活をテーマとしたバラエティー番組が人気を集めたりしている。新聞などでも、収入が少なくても「生きがい」を大切にした暮らしを肯定的に取り上げることが多くなった。これらが若者の目を曇らせ、「下流」をよしとする風潮を思いがけず作り上げていないか、気に掛かる。「ビンボー生活」が、生き方として選択した上でのことならば他人がとやかく言うことではないが、恐ろしいのは、現実を見ぬまま風潮に流されてしまうことだ。