2005/09/01UP


心意気

 ◆…電子辞書が古くなってきたので、買い替えることに決めた。ものぐさなたちなので、 分厚いページをめくるのが何とも面倒で数年前から愛用している。国語や英語辞典はもとより、言い換えや熟語辞典など文章書きに役立つ定番から、家庭の医学や手紙の文例集といった あまり出番がなさそうなものまで数十冊分が手のひらに収まってしまう。◆…全国どこで買っても中身に差がない電化製品は、インターネットでの買い物がお得だ。今回利用したのが、安値比較のサイト。品番を入れると、通信販売の会社が安い順番に数十件、ずらりと並ぶ。 後は送料と税を考慮して、総額で一番安いところから買えばいい。同じ物なら、安い方がいいに決まっている。◆…と、「賢い消費者」を気取ってみたものの、ふと恐ろしさを感じた。価格だけで競争していけば、生き残れるのは一社だけ。ほかの会社が立ち行かなくなるのは明らかだ。すべての物に仕入れ値がある以上、勝者となれるのは薄利多売が可能な会社のみだろう。 ◆…ネット上の空間に限らず、街の商業でも同様の構図が見える。角田でも空き店舗が目立ってきた。 店を閉めた理由はそれぞれだろうが、競争に耐えられなかったという理由が大きいのではないか。 大型の量販店が栄え、街の小さな商店は死んでいく。「非効率な部門の、これも構造改革さ」と言ってしまうには、殺伐とした風景である。◆…街から店が消えていけば不便になるだけでなく、隣人を失うことも意味する。商店主たちが消えれば、飲食店をはじめとするサービス業も影響を受ける。 税収が減っては自治体だってぐらつく。「そして誰もいなくなった」というのでは、新聞だって読んでもらえない。らせん階段を下っていくようなものだ。◆…以前、講演で聞いた、沖縄の一部にある「共同店」の話を思い出した。住民共同出資の生協のような仕組みで、利益で奨学金や医療費の融資制度、村のトラックや船の購入に充ててきた。 村のおじいたちは、量販店に行けば百五、六十円で買えるビールをわざわざ定価で買い「高いのがうまいんだ」と笑ったとか。なかなか粋な話である。◆…安さだけに目を奪われるケチな性格を簡単に変えられそうにないが、これからはおじいたちの心意気を少しは見習おう、と考えている。