2021/4/1UP



 警察の「察」は「察する」を意味すると最近聞きました。犯罪や事故を防ぐために危険を前もって知ること、さらには人の心理を読み取る力のことも指すそうです。東日本大震災や2019年10月の台風19号などの被災地では特に、犠牲者や行方不明者、その家族の思いをくみ取ろうとする意識が求められるのではないのでしょうか。大震災から10年を迎え、角田署が3月8~12日に展示した「祈りの木像」を眺め、そう感じました。 木像を制作したのは、市内在住の元宮城県警警察官。定年退職後に大震災が起き、死者、行方不明者、関連死者計約2万2000人を慰霊しようと昨年4月まで9年かけ、同じ数の木像を彫りました。角田署に並んだのは12体。台風19号の犠牲者も追悼するため、同署管内(角田市、丸森町)の犠牲者数(関連死を含む)に合わせました。 若手警察官に大震災の記憶や教訓を伝承するのも展示の狙いでした。制作者の元警察官に、行方不明者の捜索で若手に助言したいことは何かと尋ねました。「自分の家族を捜す気持ちで当たれ」。察するための基本姿勢と感じました。木像の制作も、家族のつらさや悲しみを我が事ととらえながら進めたのでしょう。 察することが大事なのは、警察の業務だけとは限りません。行政や福祉などの分野でも同様です。大震災では10年が経過した今も原発事故の避難者は多く、修繕できないままの家で暮らす「在宅被災者」の問題などもクローズアップされています。台風19号のケースも含め、復興のはざまに取り残された被災者の胸の内を察し、支援策を探る姿勢が必要です。 2月13日夜の地震は、大震災や台風19号に比べれば被害は小さかったものの、市内でも道路や建物などに被害の爪痕が残っています。「また大きな揺れが来たら、さらに崩れるのではないか」との声も聞かれました。関係機関が住民の不安を察しながら対応に動くことを望みます。 報道する側としても、目に見える復旧・復興の状況ばかりに気を取られず、被災者の不安や心痛を察しながら取材に取り組む姿勢が欠かせません。祈りの木像から改めて教えられました。


角田署に展示された祈りの木像

角田市内の大森山から望む山元町の海