2021/2/1UP
みちのく言葉遊び
元旦は角田支局で迎えました。新型コロナウイルスの影響で人の動きが少なかったせいか、晴れ晴れとした雰囲気はなく静かに年が開けたように感じます。 例年と変わらず明るくにぎやかだった場がありました。テレビの中です。お笑い番組が目白押しでした。こうした中、インターネット上では「漫才論争」なるものが繰り広げられており、注目しました。 漫才日本一を決める年末恒例の人気番組「M-1グランプリ」で、優勝したコンビはコミカルな動作を中心に笑いを誘ったため、視聴者の間で「しゃべりの掛け合いで笑わせるのが漫才ではないのか」との議論が巻き起こったそうです。 これに対し、ベテラン漫才師の方々もテレビ番組などでコメントしました。「漫才にはいろいろな形があっていい」との意見が大多数だったようです。プロがそう言うのならば漫才で間違いないと思います。ですが、論争が起こるのは、視聴者側に動作よりも言葉の笑いを求める層が一定数以上いるからでしょう。はっきり言うと自分もその一人です。それは私自身が言葉を扱う仕事をしているからかもしれません。 河北新報朝刊の社会面に「みちのく」というミニコーナーがあります。内容は地域のちょっとした話題ですが、通常の記事と異なるのは「落ち」が必要なこと。慣用句をもじったり、だじゃれを用いたり、時の流行語を引用したりと、遊び心が必要となります。漫才や落語家の大喜利と共通しているかもしれません。 一昨年、角田市内の「産直広場あぐりっと」にあるロボット型ピザ窯をみちのくで取り上げました。「店の目立つ場所に移したいが、重くて大変。体はすすで黒くなり、掃除が必要だ。世話は焼けるが、店は『おいしいピザも焼いてくれる』と温かく見守っている」と締めくくったのが評価(?)され、本社編集局内の月間みちのく賞を受賞しました。 昨年、みちのくに取り上げた角田の話題は9本でした。このうち、こどもの日を過ぎて中島保育所に手作りこいのぼりとマスクが届いた話題は「コイの季節も感染予防の時期も春だけとは限らない」と結びました。恋の季節と掛けたつもりでしたが、読者の方々にはどのように受け止められたでしょうか。 稲刈りを終えた水田で枝野小の児童たちが農家と一緒にペットボトルロケットを飛ばした話題は「世代を超えて楽しめる農作業の打ち上げ行事になりそう」と締めました(「打ち上げ」が掛け言葉になっています)。遊び心と一口に言っても、落ちを考えるのは言葉の可能性を広げるような作業でもあり、通常の記事を書くより難しいです。 みちのくは東北各地の記者が出稿します。漫才の審査員になったつもりで「今日の落ちはうまい」「もう一歩」と評価しながら読むと面白いかもしれません。 漫才論争がきっかけではありませんが、言葉遊びに精進することを今年の目標にしようと思います。その姿勢を示すため、今読んでいただいているこのコラムにも落ちを付けようと頭をひねりましたが、全く思い浮かびません。受験シーズンですし「落ち、ない」と験を担いだということでご容赦ください。今年もよろしくお願いします。
産直広場あぐりっとのロボット型ピザ窯
稲刈りを終えた水田でペットボトルロケットを
打ち上げる枝野小の児童(昨年10月)