2020/7/1UP


食のまち

 「イベントの中止で取材が減ったのではないですか」 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、心配の声をよく掛けられます。確かに、この春は催しに出向く機会はほとんどありませんでした。それでも、仕事がめっきり減ったという印象はありません。人は苦境が続いても何とか工夫を凝らし、営みを続けようとします。そういった方々から「コロナ対策の活動をぜひ新聞で伝えてほしい」との案内が多く寄せられました。 営業の縮小を余儀なくされた飲食店に関わる案件が多かったように思います。市内の各店がテークアウトに活路を見いだし、角田市も店の一覧やメニューをホームページに掲載しました。災禍時にも通用する新たな経営基盤を築こうと、地域の食材を加工した缶詰を製造する取り組みも紙面で紹介しました。 せっかくの機会なので、テークアウトを可能な限り利用しようと思い立ちました。ちょうど2、3月に市内でスタンプラリー「どんぶりまつり」があり、各店を巡っていたところでした。その延長として、自宅でもじっくりと街の味を吟味しようと考えました。飲食店を応援する狙いもあります。 仕事の終わりが夜遅くになり、誇れるほど多くの店でテークアウトを利用できたわけではありません。それでも、角田の飲食店は粒ぞろいであることに気付かされました。和食でも洋食でも中華でも気軽に足を運べる店が多く、庶民的だったり、ボリュームがあったり、ちょっぴり高級感があったりと店のタイプも多種多様です。もちろん味も申し分ありません。 角田の食材に使われたメニューもありました。地産地消が店のおいしさを支えていると言っていいでしょう。かつて市内のある農家が「角田は農産物の種類が豊富だけど、代表的なものがない」と話していました。確かにそうだとは思いますが、角田の農産物は全ての種類が4番バッターだと考えれば心強く感じます。 角田で食のまちづくりが進められる理由が分かったような気がします。名店や食材を生かさない手はありません。とは言え、緊急事態宣言の解除後も飲食店に客足がすぐさま戻ることはないようで、コロナに負けないための努力や工夫はまだまだ必要とされています。市内の70店超で利用できる「おいしいかくだ応援クーポン券」も発行されました。地元の人にとっては、店の支援にとどまらず、地域の豊かな味わいを再認識する機会にもなるのではないでしょうか。 イベントや行事の取材案内は、徐々に戻ってきました。食のまち再生を伝える機会もこれから増えるのではないかと期待しています。


角田の飲食店で製造されている缶詰

収穫時期を迎えた青梅