2019/10/1UP
シャッターチャンス
角田で経験する1年目の夏が終わりました。初めて見る地域の夏まつりを思う存分目に焼き付けられました…と言いたいところですが、取材もしなくてはならないので、主にカメラを通して眺めることになります。秋が深まりゆく中で恐縮ですが、ファインダー越しに見た夏の思い出を振り返りたいと思います。
8月3日の角田市尾山の「金津七夕」は、竿灯(かんとう)行列が暮れなずむ街を優しく照らし、夏の夜の風情をふんわりと醸し出していたのが印象的でした。さて写真撮影ですが、光が乏しい夜は苦労します。フラッシュの光では夜まつりの雰囲気が出せません。「ぶれを生じさせることなく、紙面上でも明かりがくっきりと分かる写真を」と半ば意地になって何枚もシャッターを切りました。
思い返せば、秋田総局に勤務していた20年近く前、東北三大まつりの一つ「秋田竿灯まつり」を取材しました。10メートルはあろうかという竿灯を、差し手が手のひらや腰、額の上などにバランス良く立てます。竿灯の先端まで写真に収めようと、路面にへばり付くようにしてローアングルでひたすら撮りました。有名なまつりが目の前で繰り広げられているのに、ざらついたアスファルトの感触の方が強く心に残っています。
8月9日の「アルプスアルパイン夏まつり」には驚かされました。同社角田工場近くの住民が楽しむ恒例行事と思いきや、市外からも大勢が訪れ、主催者発表で約8000人が集まりました。ここまで規模が大きく、角田内外に広く定着しているまつりだとは思っていませんでした。
紙面には盆踊りの写真が掲載されましたが、フィナーレの花火も撮っています。花火の撮影は竿灯よりさらに大変です。ぶれないように、芝生にあおむけに寝て体を固定させて夜空にカメラを向け、花火が開くのに合わせて何枚も撮りました。
ここでも秋田総局時代の苦労を思い出しました。毎年70~80万人の見物客を集める「大曲の花火」を取材したことがあります。夜、秋田新幹線こまちに乗って秋田駅から大曲駅へ向かい、人波に押されながら何とか花火を撮り、紙面の締め切りに間に合わせるために新幹線で秋田市内へとんぼ返りしました。夜空に広がる大輪も、四角いフレームの中に小さくまとまったような形で心に刻まれています。
まつりを心の底から楽しめないことへの愚痴のようになってしまいました。角田では秋田総局時代の反省を踏まえ、ファインダーからしばし顔を遠ざける余裕を持つようにしたので苦い思い出にはなっていません。「かくだふるさと夏まつり」の日は所用でどうしても休暇を取らなくてはならず、見物できませんでしたが、角田の夏をとりあえずは雰囲気だけでも感じ取ることができたのではないでしょうか。
写真の出来ばかり考えていると、まつりのひとときは過ぎ去り、あっという間に涼しい季節を迎えてしまいます。シャッターチャンスより短い夏。来年はもっと楽しめればいいなと思っています。もちろん、仕事をおろそかにすることなく。
8月3日・角田市尾山「金津七夕」竿灯(かんとう)行列
8月9日・「アルプスアルパイン夏まつり」