2017/4/1UP


ルノワール展

 本社主催事業で恐縮ですが、宮城県美術館で開かれている「ルノワール展」を見てきました。印象派の巨匠の1人であるルノワールは、幸福の画家と言えます。「幸福な主題こそが幸福な絵画を生み出す」という信念に基づいて、美しい絵を描いてきました。ルノワール自身は決して裕福な家庭の生まれではなく、革新的な作品に対する批判も強くて順風満帆の人生を送ったわけではありませんが、逆境の中でも、「人間が最も美しく見える部分をより美しく描くこと」を芸術の使命となし得たことに大変尊敬を覚えます。人間、人生への信頼と希望を失わずに生きた本質的に強い人だったと思います。  東北初公開で今回の目玉である「バレリーナ」は、第一回印象派展に出品された作品。当時は批判にさらされたそうですが、振り向いた少女の凜とした美しさは、「そもそも批評を差し挟むようなまねをするな」とも言いたくなります。美しいものを美しく描くこと。宮崎駿監督の今を追ったドキュメンタリー番組を先に見たときに、あるゲーム事業者が試作した動画アニメーションを宮崎監督に見せるのですが、グレーの物体が気持ち悪い動きをする。私はよく分からないのですが、「ソンビゲーム(?)として面白い動きだと思って」と口にする事業者に、宮崎監督は「これが美しいと思うのか?」と吐き捨てました。事業者がIT界で成功者とされる人間だったので、なおのこと私も暗澹たる思いになりました。  白い肌の娘を描いた「花かごを持つ女」と、日焼けした娘の「婦人習作」は対の作品で、都市と農村の対比を思わせます。オルセー美術館に、婚礼のダンスを描いた対の「都会のダンス」「田園のダンス」という作品があります。都会は女性がしとやかに幾分の不安をにじませながらダンスするのに対し、田園の女性は幸せいっぱい、笑い声がこぼれんばかり。健康そのものという印象に好感を持った絵でした。セザンヌやモネなどとともに野外スケッチに取り組んだルノワールにとって、近代化が進む都市生活に対して、農村は健全で人間らしいフィールドと考えられていたと思います。先だって、東京工業大の留学生が角田に民泊し、そば打ち体験や山元町のイチゴハウスを見学する交流事業がありましたが、チェコ人留学生が「農村は都会より親切で、クリエイティブ」と取材に答えて言いました。   ルノワールの創造性の核心は、やはり美しいものを美しいと感じ、美しく描こうとした素直さだと思います。晩年、リウマチに悩まされ、関節の痛みも激しかったようですが、その時でも「やっと自分の表現ができるようになった」と言ったルノワール。印象派の画家たちがスケッチに出掛けたアルジャントゥイユなどは、パリから電車で1~2時間の近郊。ちょうど角田-仙台の距離感に近いです。4月16日まで開催中で、皆さん仙台にお出掛けいただいて、ルノワールに思いを巡らせてはいかがでしょうか。


子どもとくら太鼓引き継ぎ式