2016/9/1UP


市長選総括

 角田市長選(7月31日投開票)で現職の大友喜助氏(65)が3選を果たしました。今回の市長選は、大友さんが推進する賑わいの交流拠点施設(道の駅)整備計画が、最大かつ、ほぼ唯一の争点となりました。新人の木村伸一氏(63)は、計画の白紙撤回を求めました。投票率60・70%で、813票の僅差で大友さんが勝ったことは既にご案内のことです。今回、道の駅というワン・イッシューで議論が2分した点が、今までにない特徴だったと言えます。道の駅以外は、子ども医療費の所得制限の撤廃や18歳までの対象拡大など両者の公約は相当重なり、大同小異でした。その点、ある程度まで純粋に政策を問う選挙だったと言えます。人間関係が濃厚な地方の首長選で、政策が判断基準の前面に出ることは、従来はそれほど多くなかった分、時代の変化と地域社会の成熟を感じるものでした。  農協出身の三文字正次市長と、商工会の屋代文太郎県議の政争が華やかなりしころから、角田の選挙は郡部・農業者と中心部・商業者との争いの構図が脈々と続いていました。大友さんも木村さんも一応町場の候補で、その構図が崩れたかに見えますが、木村さん陣営には、佐藤清吉前市長の選挙スタッフだった農業者らが参加。まだ政治の流れの色が残っていることをうかがわせました。  もっとも、2人とも市総務部長経験者で、大友氏は企画畑、木村氏は財政畑とやや色分けできますが、いずれも事務職です。民間出身の候補者が役所に乗り込み、民間感覚を行政運営に持ち込むといった改革は想定し得ませんでした。残念ながら、投票率は前回8年前を7ポイントも下回り、過去最低を記録しました。道の駅という争点がありながら低調だったのは、「コップの中の争い」と見られたことを示しているでしょう。表だって中立を保った長谷川洋一県議会副議長も市職員出身者であり、現在の市政のキープレーヤーが行政マンぞろいであることは、角田の人材輩出層のやせ細りを反映していると思います。  取材を通じて感じたのは、赤字への不安は、女性の方が強く抱いている印象がありました。まちが停滞する中、市政発展へ何かしら打開策を探らなければとの考えと、財政負担の懸念をはじめとする閉塞感との両極を行きつ戻りつしているのが、角田の現状でしょう。今回の市長選がある程度純粋な政策選挙であり、地域の成熟ということを先に挙げたのも、角田の姿がありありと示された選挙だったという意味です。  選挙戦最終日、大友氏の選挙事務所の打ち上げ式に駆け付けた丸森町長が「丸森は、あぶくま荘建て替え、認定こども園、水道整備と計30億円の事業を抱えている。やらなければならないものを英断するのがトップ」と発言したのが印象的でした。必要な政策に腹をくくるのを前提とし、その実現のために道筋、進め方と全体を丹念に調整することが政治家の役割です。道の駅との競合を懸念し、農産物直売所関係者などが木村氏陣営に回りました。道の駅は構想そのものより、進め方に問題が指摘されそうです。大友市長は当選の弁で「耳を傾けるべきところは傾け、共存共栄を図る」と述べました。小さいまちで争っていても何にもなりません。全体が一致協力できるよう、二分されたまちの統合へ政治家として一皮むけることが、大友市長3期目の課題でしょう。


当選決定直後の大友市長