2016/7/1UP


18歳 投票に行こう

 参院選が22日に公示され、7月10日に投開票が行われます。消費税増税の先送り、アベノミクス、安全保障法制などが争点になっています。そして、18歳に選挙権が引き下げられて初めての節目の国政選挙。市内の18、19歳の新有権者は約500人とされますが、みなさんにはぜひ投票に行ってほしいと思います。  非正規雇用が5割近くに上り、若者が結婚や出産を望めない世の中になっていると言われます。格差が縮小するどころか拡大し、「経済的徴兵」という言葉も聞かれます。ハイスクールに軍のリクルーターが訪れる米国を追った堤未果さんのルポのような世界が、日本でも遠いことではなくなるかも知れません。  各地の高校で主権者教育が模索されていますが、宮城県内では低調のように感じます。宮城県教委が、校内での生徒への取材を控えるよう求める通知を各高校に出しました。この場で論評は差し控えますが、全般的な問題として感じるのは「生徒の主体性をどれほど本当に尊重しているのか?」という疑問です。県教委の説明は「生徒に学校を代表させるようなプレッシャーを与えかねない」などでしたが、「生徒が自ら言葉を発するのに、そこまで周囲に気兼ねし、KY(空気読めない)を恐れなければならない時代なのか?」という点に、最も寂しい思いがしました。  井上ひさしさんのエッセーで、仙台一高で「エスケイプ、エスケイプ」と口にしていた先生のエピソードを記憶しています。エスケイプ(逃避)とは何のことでしょう?これは、エーリッヒ・フロムというユダヤ人の心理学者の主著「エスケイプ・フロム・フリーダム(自由からの逃走)」という本のこと。フロムはナチスのドイツからアメリカに亡命し、ナチス批判の論陣を張りました。この名著は、ナチス支配下のドイツなどを念頭に、人間は与えられた自由を守るために責任を持つことを覚悟するより、自由の厳しさを放棄し、管理されることを甘受していく側面を持っていることを分析し、本当の自由の意味を問うた労作です。このような本について、高校生の前で話そうとする先生がいたことに感慨を覚えました。皆さんよくご存じ、仙台一高が舞台の小説「青葉繁れる」に粋な校長が登場しますが、ああした教師像が生み出される土壌に、当時の学校の空気があったことは想像に難くありません。不肖、灰色の青春を送った自分の思い出では、現代国語の先生が一風変わっていて、車に乗せて校舎に犬を連れて、休憩時間に散歩させていました。授業は小論文重視。夏目漱石の講演「現代日本の開化」を取り上げていました。もちろん今も、深い教養を持った先生が多くいらっしゃることでしょう。ただ、やはり時代の違いはあるようで、それは個人の問題というより社会全体の構造だと思います。  保育や育児など若い世代向けの政策には予算が少なく、介護や年金といった高齢者向けの政策には手厚く。投票率が高い高齢者が、投票率の低い若者より優先されている現状は「シルバー民主主義」と言われ、予算配分は9倍の差があるとされます。政治に関心を持つ大切さと面白さを、18歳の皆さんにも感じてほしいと思います。ただ、大人が心配するまでもないでしょう。今の若者は敏感で、賢明と思います。18歳のみなさん、ぜひ投票に行きましょう。そして、拙文でも、ささやかでも考える素材を提供できれば喜びですが、そのためにも新聞(河北新報なら幸いですが、他紙でも)が家庭で読まれますように、と我田引水で締めくくらせていただきます。


郷土資料館「七夕展」