2012/11/1UP


県内版

 皆さんは新聞を開く時、どこから読み始めるだろうか。どの面を探せば、角田市に関係する記事にたどり着くことができるのか。角田の記事が一カ所にまとまって載ることはないが、確率的・傾向的に言えば宮城県内版を眺めるのが手っ取り早い。社会面はともかく、経済面や総合3面あたりに載った角田のニュースが市内の読者に見落とされることがあるのは、県内版への愛着の裏返しと理解している◆では誰が原稿を掲載する面を決めるのか。ニュースの仕分け業務をこなすのが、本社にいる「デスク」と呼ばれる人たちだ。私たち記者側も完全にデスク任せにせず「これは独自記事だから1面、社会面で派手にお願い」「よい写真が撮れたのでモノクロ面では使わないで」「訳あり記事だから小さく、見出しも目立たないように」という具合に、掲載面や扱いの希望を伝える。デスクは政治、経済を担当する「硬面」、事件や社会問題といった社会面系を扱う「軟面」などに分かれ、各面のメニューを決定。現場から原稿が送られる前の夕方の段階で、朝刊用の出稿予定としてまとめられる◆内容、性質によってほとんどの面の構成材料が決まる中、県内版は例外的だ。事件記事の隣に宮城県政をめぐるニュースが掲載されたり、真ん中にきれいな花の写真が陣取っていたり、分野をまたいでさまざまな記事がひしめき合う。本紙の「デスク日誌」欄で、県内版について「カオス(混沌)」と表現したデスクがいたほどだ。要は県内ニュースという地域的くくりがあるだけ。角田支局を含む宮城県内の総支局にとって、さまざまなページに載せる機会があっても、やはり県内版が主戦場であることに違いない◆その県内版は東日本大震災直後、面自体が消えた。新聞用紙を供給する複数の製紙工場が被災したため、河北新報は紙不足と向き合いながらの新聞製作を余儀なくされた。8ページ構成の2011年3月12日付朝刊を皮切りに、12ページや16ページの薄い新聞を作る日がしばらく続いた。全ページを総合面、社会面のような作りにして、震災被害を伝えるのが精いっぱいだった。4ページだった県内版は4月1日、1ページだけの形で復活した。非常事態では仕方なかった休止だが、再びホームグラウンドが使えるようになった喜びをかみしめている。今は存分に、県内版4カ面の上を走り回ろうと思っている。