2011/3/1UP


30秒の世界

 県内の各市町村が地域の魅力を映像でPRする「ふるさとCM大賞」。某在仙テレビ局が主催、放映している年に1回のイベントだ。ユーモアの中に地域おこしに対する思いが伝わる作品が多く、見ていて楽しい。正月に行われる放送をここ数年、欠かさず視聴している◆地域の誇り、自慢をわずか30秒に凝縮させる。入賞の段階に応じ、1年間に一定回数を無料放送してもらえるとあって、制作に熱が入るのも当然だろう。子どもたちが特産品をおいしそうに味わったり、在住の外国人を出演させたり。説明っぽくなってしまうとつまらないし、映像技術が高ければ良いCMであるとも限らない。映像表現の優劣について、私は専門外なので判断できない。あくまでも素人として、発想や着眼点に注目しながら見ている◆角田市も毎年出品している常連。市の新人職員たちが制作しているという。前々回は銀賞に輝いた。今年はどんな作品に仕上がったのか。高校野球で地元代表校の試合を観戦するような気持ちで、画面に食い入った。角田市のCMはこうだ。主役は若いカップルで、男性の方はなんと宇宙人。彼は生まれた星に帰らなければならず、視線の先には台山公園にあるH2ロケット模型がそびえ立つ。2人の思い出と重ねるように、高蔵寺阿弥陀堂などの市内の名所が紹介された。所々にユーモラスに映り込む宇宙人が、見る者の笑いを誘う。「角田の魅力が詰まっていた。テンポも良かったねぇ」。個人的にはそんな感想を抱いたけれど、残念ながら入賞には届かなかった。「地元のひいき目を割り引いても、○○町より角田市の方が入賞にふさわしいのでは」と放映直後、審査結果に首を傾げてしまった◆ただ、今になって何となく理由が分かる気がしている。生意気なことを言わせてもらうと、このCMを楽しむには「角田=宇宙のまち」という図式を理解していることが前提だったように思う。予備知識のない人は唐突な印象を持ち、「なぜここで宇宙人?なぜロケット?」と受け止めたのではないだろうか。素晴らしい映像作品だったが、角田を知らない人に知ってもらうためのCMとして、あと一歩及ばなかったのかもしれない。角田市には世界レベルの宇宙研究開発施設がある。だから「宇宙のまち」。そういった情報を説明調にならないように伝えるのは、口で言うほど簡単ではない。まして「何かアイデアを持っているの?」と問われると、返答に困る。この難題にどう立ち向かうのか。気が早いかもしれないが、次回作が楽しみでならない。