2010/3/1UP


トンネルの先

 仙台などに車で用事がある時、柴田町経由で国道4号を北上することが多かったが、最近では公私を問わず常磐自動車道山元ICを活用させてもらっている。岩沼、名取周辺での渋滞に巻き込まれず、ストレスなく目的地を目指せるからだ。さらにうれしいことに、山元ICにつながる狭くて曲がりくねった四方山越えの 県道ルートは今年の秋、「角田山元トンネル」に生まれ変わる。角田市中心部から10分足らずでICに たどり着けるようになる。開通が待ち遠しい。また隣の丸森町では阿武隈川をまたいで建設中の巨大な丸森大橋が姿を現しつつある。大橋を含む「国道113号舘矢間バイパス」は2012年春に開通する予定で、角田市から福島県新地町、相馬市方面へのアクセスも向上するだろう◆国道4号と6号、東北自動車道、 東北新幹線などといった大動脈に囲まれながらいずれも角田市内を通らず、これまで市民はその恩恵を受けにくかった。阿武隈山系の東側である沿岸部との人的交流はお世辞にも活発とは言えない。だがそこに風穴が 開き、架け橋ができることで、地域に長年漂っている閉塞感を打破してくれるような気がしてならない。 道路事情が改善されれば角田への、逆に角田から外への通勤状況もがらりと変わるはずだ。象徴的なのは 市内の主要誘致企業の一つであるアルプス電気が3月で相馬工場を閉鎖し、角田工場に400人近い従業員が配置転換されることだ。角田市に移住する人も一部いるようだが、約250人が相馬方面からマイカー通勤する予定だという◆高速交通網やアクセス道路整備が企業誘致や物流、観光にとって大きなチャンスであることに疑いの余地はない。そうは言っても交流人口を増やして、角田に人を呼ぶためにはやはり内側からの仕掛けが 必要になるだろう。最近は下火になってしまったが、かつて横手支局にいたころ、新庄市が終着駅となっている山形新幹線を秋田県南に延長させようという運動があった。自治体主催の決起大会で講演したフリーライターの 言葉を思い出した。「東京に行きやすくなるという自分たちの視点だけでは新幹線は通らない。東京の人たちに 『行ってみたい』と思わせるような地域づくりこそ大切」。せっかくの交通網を地域活性化につなげることができなければ、なんの意味もないのだ◆余談になるが当支局の話。トンネル開通を機に、取材エリアを拡大できないかと企んでいる。現在のエリアである角田、丸森の2市町に加え、岩沼支局管内の山元町、あわよくば亘理町も譲ってもらえないかと。今のところ本社の会議などで何となくアピールしている程度なので、本社側がどう受け止めてくれているかはまったく分からない。でも仮に実現したとしても、「河北さんは最近、沿岸ばかりに足を運んでいる」という心配は不要。トンネルの向こう側から遊びに来たくなるような話題づくりをこれまで以上にしてくれると信じているので、角田の記事が減るようなことはないと思っている。