2010/2/1UP


写真は語る

 過去に何度も記事にしているからといって、気を抜いた取材はできない。1年を通じて管内を回っていると、毎年恒例の 行事というものに触れる機会が数多くある。こちらとしては昨年の記事をコピーして出稿するわけにはいかないので、少し でも新しい要素を盛り込む努力が欠かせない。写真についても同じことが言える。過去の記事のスクラップを参考にしつつ 、定番のアングル以外に切り口はないかと探して撮影を試みることもある。会心の1枚が撮影できれば、たとえマンネリ化 したイベントであっても、いつもと違った表情を発見できるかもしれない。「支局の記者さんが変われば、写真も変わるん だね」。赴任したばかりのころ、読者の方からそんなふうに声を掛けられたことがある。お褒めの言葉をいただいたと都合 良く解釈しているが、記事全体に与える写真の影響がそれだけ大きいということなのだろう◆初めて一眼レフカメラを手に してから10年が経った。取材に不可欠な“相棒”の能力を自分は最大限に引き出せているだろうか。宝の持ち腐れになっ ていないか。胸を張って答える自信は正直ない。カメラ付き携帯電話やデジカメが普及している現在と違い、学生時代には インスタントカメラしか手にしたことはなかった。入社時に短い研修を行い、基本を教わるとすぐ現場に放り出された。対 象を撮り逃した、ピントが合っていなかった、フィルムを感光させてしまったなどの失敗談は挙げると切りがない。1枚で も多くと無駄にシャッターを切ってしまうのは、リスクを回避したいという弱気な姿勢の表れに違いない◆撮影技術に不安 がある記者にとって、心強い助っ人になるのが本社の写真部だ。自力での撮影が困難な場合、写真部に派遣要請することが できる。逆にあちらから「○○が撮りたいので角田に行くよ」と言われることもある。昨春のトキ飛来、島田の山林火災で のヘリコプター空撮などは写真部のカメラマンによるものだ。「あの写真は支局記者の力では撮影できないよね。きっと本 社から応援を呼んだのだろう」などと想像し、写真を見比べながら新聞を読むのも面白いかもしれない◆たかが10年と言 ってもその間、撮影、送信環境は目まぐるしく変わった。銀塩カメラはデジカメに変化した。かつて角田支局にあったとい う小さな暗室も姿を消し、今はそのスペースに本棚が陣取っている。パソコンさえ持ち歩いていれば、どこからでも簡単に 画像データを送信して紙面に反映できるようになった。その場で画像を確認できるから撮影の失敗も少なくなった。そうは 言っても写真を通じて伝えたい思い、そこにある空気までデジタル化することはできない。だからこそ現場に足を運んで悩 み続けるし、撮影の妙味があるのだと思う。何を考え、どう撮ったのか。日ごろ紙面を飾る写真から記者の気概を感じ取っ てくれるとありがたい。