2009/7/1UP
ペーパーレス
「ファクス送信をやめてこれからはメールにしますね。紙を少しでも節約しないといけないですし…」。丸森町から毎週提供してもらう特別職週間予定表の話。1カ月ほど前、予定表の受け取り手段は電子メールになった。扱う文書量がどうしても膨大になってしまう行政機関にとっては、1枚でも多くの紙を減らしたいのは当然。こちらとして不都合は何もないので素直に応じたものの、添付ファイルを開いて紙に印刷し、事務所の壁に張るという支局の習慣はなんら変わる気配がない。事務書類から給与明細、株券まで「ペーパーレス化」が叫ばれて久しいが、新聞業界ほど紙依存から抜け出せない業種は他にないだろう◆職場で使用する紙の消費量は凄まじい。パソコンで記事を書くようになった現在でも、各方面から届く記事は本社デスクがプリントした後で目を通すことが多いし、レイアウトを整えた囲み記事などは、確認用として現場にファクスで送り返される。新聞を製作している編集局自体、大量消費社会の縮図のよう。降版(印刷セクションに引き継ぐ直前の段階)が近づくと、社会面や経済面、県内版など1カ面ずつ、見出しや写真が配置された状態でゲラと呼ばれるA2判の紙に刷り出される。面を組み上げる担当者はそれを持って、フロアを走り回っている。手直しが入ればまた印刷して確認する。そんなことの繰り返しだから一晩で古紙の山が築かれる◆我が支局も本社と大差はない。メールで情報提供される機会が増えたとはいえ、まだまだファクスや郵便が圧倒的に多い。本社からの指示書、会議資料などもあるから、少しでも油断すると机の上に紙がはんらんしてしまう。「モバイル記者になろう」と格好つけて今春から手帳を持つのをやめ、携帯電話から書き込んだり、予定をチェックしたりできるインターネット上のスケジュール帳を使い始めたが、結局は1週間や1カ月単位で刷り物にして張り出す始末だ。思い返せば、就職活動で手書きの履歴書を企業に郵送していた最後の世代は自分たちだった。今の学生たちはパソコンがないと職探しさえままならない。今書いているこの原稿も、きっとプリントしてからチェックしてしまうのだろう◆時代に逆行しているとの批判は承知している。でも思考過程を整理するツールとして、やはり紙は欠かせない存在だと思っている。パソコン画面をじっと眺めていても、なかなか考えがまとまらない。メモ帳や取材資料など欲しい情報を紙として手元に置いていた方が、ストレスなく頭に入るし筆が思うように進む。少なくとも自分はそうだ。大勢の番記者がレコーダーを政府高官の口元に向けている場面をテレビで目にすると、なんとなく違和感を覚えてしまう。一言一句を聞き逃すまいとメモを取る前時代的な記者は近い将来、姿を消してしまうのだろうか◆まあどんなに理屈をこねても、紙の恩恵を受けている以上、無駄遣いを減らさなければならないのは事実。湯水のように消費してきたことを省みながら、手始めにと、使い終わった古紙を娘のお絵かき帳に再利用させてもらっている。新聞社で働く人間が紙を大切に使う努力を怠っては、いつの日か社会から「ペーパーレス」(新聞は不要)と言われかねない。