2009/5/1UP


議会報告会に思う

 「一度持ち帰って検討させていただきたい」。議会の追及を受けている行政当局のような、何となく歯切れが悪い答弁。矢継ぎ早に繰り出される質問者の言葉には集中して耳を傾けた。でも答える側は決まり切った言葉を並べただけ。思わず途中でメモを取るのをやめ、ペンを置いてしまった。答弁に立っていたのは、いつもなら市当局に鋭い質問をぶつける立場にいる角田市議会の議員さんたちだ◆4月下旬、市内延べ12カ所で初めて議会報告会が開かれた。議員全員が3班に分かれ、4日間かけてすべての地区を回り、住民との対話を試みた。取材目的で参加したのはもちろんだが、角田市民になってまだ日が浅く、市政の課題をゼロから学べるこんなチャンスはない。「名刺交換もできるから一石二鳥」と思い、数カ所に足を運んだ。会場では予算に始まり、町尻土地区画整理問題や地区振興協議会の在り方など、幅広いテーマが話題に上った◆ところが実際の質疑応答は想像していたものとは少し違った。議会側は先の定例会で可決した2009年度予算を報告し、議論のたたき台にしようと考えていたようだ。その発想自体は間違っていない。問題なのは市広報のコピーを配布して、予算のあらましを紹介することに終始したこと。それなら当局が説明すれば十分足りることで、議会が地域に出向く意義を見いだせない。結果的に原案通り可決された予算だとしても、「○○の部分が争点になった」「△△に疑問があったので委員会で当局に説明させた」などと、議会の態度を示すことにもっと時間を割けなかったのだろうか。予算審議の場にいたからこそできる話があっても良かったと思う。少なくとも私はそのことが一番知りたかった◆気になった点をもう一つ。「個人的見解を述べるのを自粛し、議会としての総意や決定事項として説明する」というルールを設けていたこと。議員個人や会派で考え方が異なるのは当然だし、19人全員が統一見解を持っているほうがむしろ気味悪い。議員代表ではなく、せっかく全員参加形式をとったのだから、それぞれの顔が見えるような工夫が欲しかった。「選挙向けの自己アピールに利用されると困る」という懸念もあったようだが、一人ひとりの議員が普段何を考え、どう行動しているかを知らせずに、有権者の審判を仰ぐことはできない◆厳しい注文ばかり並べてしまったが、報告会はまだ1回目。議会も手探り状態で開催した。ある班では反省会も真剣に行われたようで、開かれた議会を目指そうという意気込みは素直に歓迎したい。今秋には2回目が予定されている。全国に誇れる角田の議会報告会に育てていくためには、私たち住民の力も欠かせない。それだけに今回は参加者が50人を超えた会場がある一方、20人に満たない地域もあったのは残念に思う。晩酌1回を我慢して市政の現状に目を向ければ、自分たちの思いがひょっとしたら政策に反映されるかもしれない。市民全員がそんな気持ちになれたら、「協働のまちづくり」がぐっと身近になる。