2008/10/1UP


怖い体験

 ◆…飲酒運転をしてしまった。といっても、違法な行為をした訳ではない。先日、角田自動車学校で開かれた「飲酒運転体験研修」に参加する機会を得た。 ◆…アルコールが運転にどう影響するのかを実地で確かめ、職場や地域での啓発につなげよう―というのが狙い。酒を飲めば、運動能力や判断力、認識力が低下するというのは常識の話。経験上も、いい気持ちになって千鳥足でふらふらと家路につくこともしばしばあるし、酔眼に映る女性が美しく見えるのは、認識力が低下しているせいだということも知っている。 ◆…だが、酒飲み運転というのは、やろうと思えば実に簡単だが、絶対にできない行為である。そこで、貴重な機会をじっくりと体験し、読者の皆さんに飲酒運転の怖さを伝えたいと、意気込んで出掛けた。初めに自動車学校の教官に同乗してもらい、校内のコースを回って運転チェックを受けた。車庫入れのような「方向転換」や「クランクバック」、「坂道発進」など、一通りの運転技術を確認してもらった。 ◆…そして、待望の(?)飲酒タイムに。昼食に合わせ、「晩酌程度」という条件でアルコールをいただいた。昼に飲むビールは実にうまかった。一時間半という短時間なのに、調子に乗りすぎた。風邪気味で薬を飲んでいたのも良くなかったのかもしれない。「ある程度酔わなければ体験にならん」という妙な気負いもあった。気付けばビール750CCに焼酎300CC(原液で!)ほどを空けたらしく、いつの間にか薄もやの中に落ち込んでいた。 ◆…ハンドルを握り、発進したところまでは頭の中に映像として残っているのだが、その後の記憶は全くない。後で聞いたら、「一応」はコースを一周できたらしい。自分の尺度で言えば泥酔状態なのに、運転ができたことに驚いた。もしこれが公道だったら …。車はまさに「狂気の凶器」になっているところだ。◆…「気分が高揚してついスピードを出し過ぎた」「周囲への注意がおろそかになった」などと、自分の体に起きた変化を報告するはずだったたのに、記憶がないので、これ以上書きようがない。恥ずかしながら、飲酒運転の怖さよりも、酒の怖さを思い知ったという締まらない結末になってしまった。 ◆…それはさておき、飲酒運転は「しないさせない許さない」環境作りが大切だと叫ばれている。これだけ社会的に飲酒運転追放の機運が盛り上がっても、摘発される人は後を絶たない。そこには、罪の重さに考えが至らない想像力の欠如と無知があるのだろう。 ◆…一般市民と犯罪者を隔てる壁はそれほど高くない。普通に暮らす多くの人は罪など犯さないと信じ切っている。だが、交通犯罪だけは別だ。酒を飲んで運転し、万一、人を傷つけるようなことがあれば、包丁で人を刺すのと何ら変わりがない。そのことを誰もが肝に銘じる必要がある ◆…「しない」については、ひとえに本人の意識にかかっているが、飲酒運転厳罰化の流れなど気にもせず、昔からの習慣で「これぐらいの酒なら大丈夫」とたかをくくっている人の考えを改めさせるのは難しい。刑務所に入って初めて気付くのかもしれない。となると、重要なのは、積極的に制止して「させない」こと。回りで危なそうな人がいたら、チェックの目を光らせよう。悲劇を防ぐためであり、何より本人のためでもある。 ◆…とはいえ、酒に飲まれるような人間が偉そうなことを書いてすみません。最後はもうろうとした状態のまま車で送ってもらい、子供のお迎えに行った(これもあまり記憶にない)。平静を装ったつもりだが、酔っぱらいのオヤジが酒臭い息を吐きながら幼稚園に現れ、子供たちもびっくりしたことと思う。そんな私を目にした皆さん、いつも昼間から飲んだくれているわけではないので、念のため。