2007/11/1UP

畑に思う

 ◆…支局の庭を利用して畑作りのまね事を始めて三年目。六畳間ほどの広さをクワでようやく掘り返し、 トマトにナス、トウガラシ、ジャガイモなど思いつくままに植えた。春のあたたかい陽気に後押しされて調子よく苗を植えるところまではいいのだが、春の希望は夏までには絶望に変わる。面倒くさがりな性格が災いし、雑草に負けてしまうからだ。◆…草が生える速さには驚くばかり。じっと目を凝らしていたら音を立てて茎が伸びるのが見えるのではないかと思うほどだ。しまいには除草剤でもかけて根こそぎ退治してやろうかと思ったが、曲がりなりにも家庭菜園を名乗る以上、それは許されない反則技。 そうして判決を先延ばしにして見て見ぬ振りをしていたら、いつしか背丈近くまで雑草が伸びて、野菜たちは草の海に消えていった。◆…結局、秋になって、庭木の手入れのついでにシルバー人材センターのお母さんたちの手を煩わせて除草してもらった。 徹底した仕事ぶりは職人技というほかなく、驚くほどきれいになった畑には、混乱期を生き延びたピーマンと唐辛子、それにニラの苗が数本、さみしく残されていた。同窓会で恥ずかしい話をネタを持ち出されたというか、死体が墓場から戻ってきたというか、何とも決まりが悪かった。◆…先日、ある取材で、丸森町で自然農法に取り組む夫妻の畑を見学する機会に恵まれた。畑を耕さずに農作物を育てる「不耕起栽培」に取り組んでいることは知っていたが、見るのは初めてだった。低い畝は雑草に覆われており土はほとんど見えない。その間からニンジンの葉やキャベツが顔を出している状態で、ぱっと見は我が家の雑草畑に似ていて衝撃的な光景だった。「草や虫が耕してくれます」「経費もかからず、農業機械もいらない。年を取っても、女の人でもできるんです」「最低限の道具で、自然の恵みを受け取る方法です」。説明を聞きながら、そんなに楽なら面倒くさがりの自分にピッタリだと手を打った。◆…もちろんそれは早合点で、ほっとけば自然に野菜が取れるというウマイ話ではない。農薬と化学肥料は一切使わず、必要に応じて米ぬか、油かす、おからをまく。必要なら虫も取るが、それもすべて手作業だ。草刈り機だけは使うが、後はカマ、クワ、スコップだけ。毎日毎日畑の状態を見て、適宜草刈りしたりと少しずつ環境を整える作業が続く。「知恵と観察力が必要なんです」との説明だったが、やっぱり、頭も手も使わないとダメなんだ。◆…言われてみれば、人生にも仕事にも通じる話ではある。ならば来年もまた 、修業のつもりで畑作りをやってみようかと性懲りもなく考えている。