2005/07/01UP
星空が降りてきた
◆「あまりにもきれいなものだから、電話をしてみたんだけど…」。遠慮がちに話す男性の声。ここ数日、同じような情報提供の電話を丸森町内の複数の方から支局にちょうだいした。聞けば、家の近所でホタルが群舞しているのを見たという。暑い日が続く今年の天候のせいか、それとも環境改善の努力が実を結んだためか。各地でホタルが大発生しているようだ。観察には日没後一、二時間ぐらいがいいと聞き、夕食を済ませてから、家族を連れて車を走らせた。◆おおよその位置しか聞いていなかったため、街灯のない水田地帯をさまようこと一時間。田んぼのあぜ道に入り込んでは引き返し、どこをどう走ったのか分からなくなり引き返そうかと思い始めたころ、一つ二つ、車窓越しに微かな光が。急いで車を止め、ヘッドライトを消した。辺りに闇が戻ると、地上に、星空が降りてきた。数秒ごとにじんわりと輝きを増しては、すーっと消えていく。幻想的な光景に、取材に来たことも忘れ見入ってしまった。◆人は怒りや悲しみ、驚きに直面すると誰かに伝えたくなるものだ。だからこそ「ニュース」が存在するわけだが、中でも、感動という体験は、伝えたいという気持ちが一番強くなるのかもしれない。「これなら誰かに話したくなるよね」と情報提供してくれた人たちに感謝しつつ、妻とうなずき合った。◆この種の記事は良く撮れた写真があって初めて成立する。光量が不足し、さらに動きがあるホタルの撮影は、カメラがあまり得意でない記者にはなかなか難題で、残念ながら記事にはできなかった。けれど、電話をかけてくれた人たちが見た光景とその感動だけは、しっかりと受け取らせてもらった。