2004/09/01UP


真夏の祭典

 歓声に沸くスタンド。夏の日差しにちりちりと焼かれた肌に、各校応援団の声援が熱風のようにまとわりつく。夏の甲子園大会。管内から地元選手が出ていないこともあって関心を持っていたわけではないけれど、それでも地元勢の試合結果は気になってしょうがない。勝利すれば安堵し、敗戦の報には苦い空疎感が漂う。かつて取材団の一員として訪れた甲子園。真夏の白球は、なぜか人の心をとらえて離さない。◆当時の担当は、東北6県の代表チームの応援席だった。広いスタンドで、「○○君の家族の方は」と大声を出し、主要選手の家族を探すのが第一歩。ファインプレー、先制打、失点などなど、試合の展開に合わせてスタンドを駆けめぐり、コメントを拾い集める。押せ押せムードの時は沸き上がるどよめきをかきわけるように進み、ピンチを迎えれば固唾をのむ関係者にそっと寄り添う。試合終了と同時にベンチ裏に駆け込み、今度は全国から押し寄せた記者連中とほとんど揉み合うように選手を囲む。球児には遠く及ばないものの、バックネット裏の攻防もなかなか緊張感があるものだ。◆狂騒のような取材時間が終わり、敗れたチームが静かに球場を去る姿を見送る。東北勢が残っている限り取材が続く私たちと違い、トーナメント制の宿命とはいえ、球児の大会はそこで完結する。白星を重ねて栄光をつかんだ学校も、初戦で敗退するチームも、長短の違いはあれ、一夏に描かれた野球物語が必ず終焉を迎えることに変わりはない。ある種の寂寥感をまとった夏の終わりに、青春の時が重なる。はかなく、美しい季節。だからこそ人は熱狂をもって高校野球に見入るのだろう。◆気が付けば夕暮れが迫り、虫の羽音が風の音を研ぎ澄ます時期がやってきた。躍動感にあふれた時をいとおしみながら、静かに秋を待とう。巡り来る季節が、新しいドラマを運んできてくれることを願いながら。