2025/11/1UP


夢の値段

 子どものころの夢は何でしたか?私はサッカー選手。何億円も稼ぐスーパースターになれる、と小学生のころは信じてやみませんでした。 残念ながら中学、高校と進んでいく中で、自分の立ち位置が見えてきてしまい、いつしか諦めてしまいました。夢をつかみ取る人は、生まれ持ったもの以外にも、最後まで自分を信じ、努力できる人なのだろうと感じます。 地域ブランド「5つのめ」の一つとして夢を掲げる角田市。その背景となる宇宙航空研究開発機構(JAXA)関係の取材をする中で感じることがあります。研究者たちはいずれも、幼少期からの宇宙への憧れを抱き、追いかけていくうちに現在の仕事につながっていたということ。「宇宙飛行士ってかっこいいな」と漠然と感じたことのある人間にとって、JAXAで未来の宇宙航空技術を研究している方々は輝いて見える気がします。 角田市も本年度、「宇宙のまち」として本格的に始動した印象があります。航空宇宙ベンチャーのエアロディベロップジャパンと航空宇宙産業の振興や地域活性化に向けた連携協定を結び、先月には秋田県能代市、福島県南相馬市との広域連携に向けた検討を開始。先日には、新たな産業創出を後押しする「かくだ宇宙関連産業振興ビジョン」を策定しました。市内小中学生に対する「宇宙教育」の内容拡充も図られています。 実物大ロケットやJAXA施設があるものの、これまでは「宇宙のまち」を標ぼうするには少々インパクトに欠ける部分がありました。市の取り組みにより、宇宙ベンチャーによる経済振興や宇宙産業に関心を抱く子どもたちが生まれてくることを期待したいものです。個人的な思いですが、せっかくならばグライダーも地域資源としてさらに活用してほしいところ。「宇宙のまち」のイメージとも親和性が高いように感じます。 しかし、無邪気に夢を追いかけることができない部分もあるかと思います。 5日に開催されたJAXA角田宇宙センターの一般公開で、展示施設を解説していた職員に研究内容の実現見通しを聞くと「予算がもっとあれば…」と口にしたことが印象的でした。翌日に北角田中であった、探査機「はやぶさ2」プロジェクトマネジャーだった津田雄一氏の講演では、生徒から「プロジェクトの費用はいくらか」と問われた津田氏が「約300億円…」と苦々しい顔で回答。米国であれば1000億円はくだらないとのことで、情熱だけではどうしようもないこともあったのではないかと推察されます。 新たな取り組みには何事も金銭的な課題がつきまとうもの。角田市の宇宙政策がどのように具現化していくのかはまだまだ分かりませんが、「予算が…」と夢のない議論にならないことを願いたいものですね。
田植えを終えた市内の水田。
収穫時期が待ち遠しい。