2022/12/1UP
鉄路
「阿武隈急行にSuica(スイカ)を導入してほしい」
今月3日に行われた、角田市長と角田高校の生徒たち地域課題について意見交換する「若者会議」。生徒たちから出た印象的な意見の一つに、上記の言葉がありました(会議の模様は、本稿執筆時点でまだ新聞に掲載しておりません。掲載遅れていることご容赦ください)。
多くの利用者が同様のことを考えていたと思います。私も初めて阿武急を利用したときに戸惑ってしまいました。JRからスイカで乗車して阿武急の駅で降車した場合、精算証明書のような紙を受け取り、後日再びJRを利用したときに精算処理をする流れになります。私も時折阿武急を利用して仙台などに行きますが、正直なところ「面倒だなぁ」と思ってしまいます。
10月ごろ、鉄道開業150年のニュースがテレビや新聞などをにぎわせました。地域の発展に大きな影響を持ってきた鉄道。駅を中心に地域が栄え、定住人口や交流人口の増加に寄与してきました。また、住宅や土地は「駅チカ」に価値が見いだされます。ただ、阿武隈急行の沿線を見ると、角田駅や丸森駅など宮城側の沿線は少し様相が異なる気がします。
沿線が大きく発展しなかった要因の一つに、東北線がありそうです。多くの方がご存じかと思いますが、同線は角田、丸森に線路を引く話がありました。現代の視点で考えると大きなチャンスですが、養蚕が盛んだった当時の住民は「蒸気機関車が通ると繭が汚れる」などと鉄道に反対しました。そして、東北線開通で大河原町など沿線が発展。「やはり鉄道を」と誘致運動を行い、1968年に国鉄丸森線(槻木-丸森)が開通した経緯があります。その後、「日本一の赤字路線」とも言われた丸森線は、第三セクターによる存続が決定。88年7月に福島-槻木間が全通しました。
この話は、取材の過程で何度か耳にします。角田・丸森に東北線が通っていれば―。今もそう考える方は少なくないようで、 現在、丸森町で計画されている風力発電事業でも、受け入れに前向きな住民から「あの時のような失敗はしたくない」との声も上がります。
次の要因は利便性なのかもしれません。スイカが使えないことに加え、本数も正直物足りません。利用者数が伸びず、赤字が常態化しているために設備投資ができない側面もあります。阿武急は駅前の無料駐車場が充実しているので、利便性を感じられれば潜在的な需要はあるように思うのですが…。
ちなみに、スイカについての生徒の質問に黒須貫市長は「導入しましょうと言ってもなかなか入れてもらえない。(阿武急に)高校生が言っていると伝える」と前向き?な発言。そして「みなさんもたくさん乗って下さい」と、お願いしました。
数度阿武急を利用して感じたことは、電車にゆられながら車窓を眺めると、なんだか気持ちが落ち着くことです。大学時代は約1時間の電車通学で本や雑誌を読んでいたことを思い出します。車移動が増えた社会人の今、個人的にはあえて使う価値があるように感じています。