2021/11/1UP


「2年」と備え

 これから角田支局の記者にとっては毎年、10月12日と、それまでの1カ月半ほどが、一年の仕事の大きなヤマになるでしょう。丸森町や角田市を台風19号豪雨が襲った日から節目の年が巡ってきます。今年は2年がたちました。丸森町内を中心に、道路や河川の復旧状況、洪水や土砂崩れで自宅を失った被災者の思い、犠牲者・行方不明者家族の歩みなどを取材し、面のトップ記事や連載企画にしました。つらい心境を聞く機会が多い大変な仕事でした。被災地取材以外の仕事も続々と舞い込み、あまりの仕事量に気が遠くなることもしばしばありました。それでも災害の風化や被災者を支援する動きの持続に少しでもつながったのであれば、疲れも癒やされます。 今回の取材は丸森中心になりましたが、角田では地域防災の向上につながる話題が幾つかありました。住民自治組織「桜地区振興協議会」は、阿武隈川が氾濫した時に想定される浸水の深さを看板標識で示し、地区内の電話柱など35カ所に取り付けました。水面となる位置には青ラインを貼り、状況をイメージしやすくしています。  桜地区の住民は看板標識を目にするたびに「ここは3メートルも浸水するのか」などと危機意識を抱くと思います。しかし大切なのは、実際に阿武隈川が増水した時に適切な対応ができるかどうかでしょう。2階にとどまるべきか、避難場所へ向かうべきか。車で行くべきか、歩いていくべきか。迷っているうちに危険は刻一刻と迫ります。看板標識を設置して終わりではありません。非常時に取るべき行動を家庭や地域で話し合っておく必要性は増したのではないでしょうか。  こうした点では、角田高が8月に開いた防災ワークショップが注目に値します。激しい雨の予報があり、最も高い危険度を示す避難情報「緊急安全確保」が夜間に発令されたと想定。その間の備えや行動を生徒約30人が班に分かれて討論し、シミュレーションしました。同様の取り組みは、他の学校や会社などに広がってもよいと感じました。 2年前の台風19号は土曜日でした。平日に襲来していたらどうなっただろう、と時折思います。通学していた子どもたちがいたかもしれません。各職場に従業員が出勤し、退勤時に氾濫の危険がピークになっていたらどうすればいいのか。2年前の被災経験をベースにしながらも、人の動きが多い平日を想定した備えを講じておくことも必要と考えます。 地域や家庭、学校、職場で防災意識をいかに高められているかが、「台風19号豪雨から3年」に向けた検証テーマになりそうです。


桜地区の集会所に掲示された看板標識

角田高の防災ワークショップ