2020/10/1UP
それぞれの理由
早いもので、角田市や丸森町などに甚大な被害をもたらした台風19号から10月12日で1年となります。節目の特集紙面に向け、取材に取り掛かりました。両市町で計11人が亡くなり、現在も1人が行方不明です。仮設住宅などに身を寄せている被災者は、現在も多くいます。災害の恐ろしさを世間が理解し、新たな悲劇を防ぐには、被災者の苦難や犠牲者・行方不明者の存在を一人一人が身近にとらえることが大事だ、との意識を取材の根底に置いています。
2008年に栗原市を襲った岩手・宮城内陸地震、11年の東日本大震災でも、自宅を失った方や、犠牲者・行方不明者の家族に話を聞きました。ショックや悲しみが癒えない時期に対応していただくのは、取材する側にも心苦しさがあります。
取材に応じてくれた理由を犠牲者・行方不明者の家族が語ってくれたことがありました。内陸地震の土石流で行方不明になった方の親族からは「自衛隊や消防、警察などの機関が自分たちのために捜索してくれている。世間に状況を公開すべきだと考えた」との言葉がありました。
津波で行方不明となった方の家族は「見つかるのを待ちながら、家族で前向きに歩むきっかけにしたい」と悲しみをこらえ、語ってくれました。ある県内沿岸部の町役場職員は職場で揺れに襲われ、避難誘導をした後に津波で亡くなりました。職員の奥さんは「夫は最期まで仕事を頑張った。その記録を残したい」と気丈に述べました。
取材する側の理念とは別に、犠牲者や行方不明者の家族らにもそれぞれに、取材を受けようと考える理由があるということを教えられました。当然「話すのはつらい」と取材を断られる場合は、その気持ちにも配慮しなくてはいけません。それでも、報道で少しでも力になれることがあると信じ、台風から1年の現場を訪ね歩きたいと思います。
昨年10月の台風で冠水した角田市役所周辺
冠水が2日余り続いた丸森町役場