2017/2/1UP


 「Giant ゼロ」の年の始まり

 新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。すっかり時機は過ぎましたが、読者の皆様は正月をいかがお過ごしでしたでしょうか? 私は寝正月を決め込みたかったのですが、早々から各紙を見回さなければなりません…で、弊紙を含めて活字に取り組んだのですが、今年はいつも以上に「世界情勢はどうなる?」との特集が多かった印象でした。原因は、トランプ氏の米大統領就任です。トランプ大統領は就任演説で早々に、保護主義的なアメリカ第一主義を宣言し、環太平洋経済連携協定(TPP)離脱と北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を表明しました。2つの経済協定の見直しは、自動車部品メーカー関連工場が立地し、コメや牛肉など農産、畜産物生産が盛んな角田にも影響を及ぼすでしょう。ツイッターによる発言で株価も大きく揺れています。欧州ではフランス、オランダ、ドイツの中枢国で選挙があり、イギリスのEU離脱交渉も実際に始まります。ポピュリズム(大衆迎合政治)が今年も世界にどのような流れを引き起こすのか、時代の転換期であることは間違いないでしょう。 この間の各紙の識者評論では、フランスの経済学者ジャック・アタリ氏の論が深く残りました。アタリ氏は「世界の警察官」たる米国が内向きになることで、世界の暴力抑止力が退潮し、歯止めが効かなくなる危険性を指摘しています。米国の政治学者イアン・ブレマー氏が提唱しているのは、「Gゼロ」という概念です。世界を見回し、責任を持つ超大国がなくなったとの考えです。法学の創始者であるホッブスの「万人の万人による闘争」という言葉がよく知られていますが、暴力をいかに回避するかが、法律のスタート点であり、人間の知恵の試金石であることを考えると、「力」や「正義」について考えることが今、一層大切になっていると感じます。 日本も転換期です。天皇陛下の退位の議論が早々に始まり、憲法施行70年を迎えます。秋以降に衆院選がいつあってもおかしくありません。改憲発議が可能な議席3分の2の維持は見通しが不明ですが、自民党は総裁の任期延長を決めており、国会でも党内でも安倍晋三首相「1強」の構図は、まだ堅固です。権力者の資質を吟味できるか、有権者も問われるでしょう。 身近では、今年の角田市はどうなるでしょう?道の駅計画が本格的に進み、正念場の年になります。駅長候補の人材が、1月から任期付き職員として採用されました。運営法人の設立準備組織を秋に立ち上げる予定で、生産者の出荷組織も検討されます。時間に十分な余裕はありませんが、まちづくりの議論を煮詰める必要があります。今年は市長選も市議選もなく、思惑抜きに市政を話し合える1年ではあります。その機を生かせるかは、市長、副市長はじめ関係者の力量にかかっています。  真の力は、権威と、それを裏打ちする周囲の信頼とで成り立ちます。 最近、ドラえもんのジャイアンについて考えることがあります。ジャイアンとトランプ大統領の最大の違いは、トランプ大統領は敵を作り、攻撃することで求心力を高めますが、ジャイアンは自分が敵になるのを引き受けている点だと思います。ジャイアンはのび太やスネ夫を敵にはしていません。ガキ大将としてジャイアンワールドの秩序を築き、のび太たちをルール(なきルール)に従わせ、何かあれば守ってやることも。横綱北の湖は「憎らしいほど強い」と言われましたが、強者は強者らしく胸を貸すという美学がありました。今や、そうした美学が崩れてしまった「Giant ゼロ」の時代の始まりを、ウォッチしたいと思います。


小学生の10人11脚競走