2014/6/1UP
ぼやき
「目標がない…」。8年前の初夏でした。5位に9ゲーム差の最下位で迎えた本拠地の試合前練習。ベンチに座った東北楽天の野村監督が、ため息混じりに言いました。負けが込み、取り囲んだ取材陣も重苦しい雰囲気。おずおずと「どん底の状況であえて目標を探すなら何でしょう?」と尋ねると、難しそうな顔でじろり。「個人成績しかないんじゃない。選手は年俸制なんだから」。「しかし、打率の計算ばかりするなといつも選手に話しておられますが…」。すると、監督はうなずいて「まあ、個人事業主とはいえ団体競技だから。ただ目の前の試合に勝つ。どれだけ多くの選手がそう思うかだ」。当時、弊紙に「ノムさん語録」というコーナーがありました。「野球の事を語りつつ、どこか人生の機微に通じるような言葉を拾ってこい」というのがデスクの指示。延々と続くぼやきに某紙のベテラン記者は「壊れたテープレコーダーやな」と苦笑していましたが、担当になって間もない私には新鮮に感じました。「二流にスランプはない」。「コーチが選手に遠慮するのはよくない。まあいいや、が一番チームを腐らせる」。ごくたまに女性ファンにサインを求められ、色紙に添える言葉は「笑顔に勝る化粧なし」。言葉の所々に含蓄があり、取材の楽しみの一つでした。ちなみに現在の星野監督は、遠征先の宿で各マスコミ担当記者を集めて「お茶会」という雑談の場を設けてくれるそうです。赴任前に東北楽天を担当していた亘理支局長のH先輩は「大抵は自慢話だけどね」とにやり。「闘将」の自慢話もまた興味深そうです。