2011/1/1UP


選挙と票読み

 河北新報読者の皆様、新年あけましておめでとうございます。角田支局に赴任してまもなく丸2年が経過しますが、慣れとは恐ろしいものであります。ネタを求めて角田の街に飛び出すことに対するワクワク感が、日に日に薄らいでいないか?効率だけを追求し、機械的に仕事をこなして満足していないか?これらの問いに「ノー」と言い切れない自分に活を入れ、漫然と1年を過ごさないために、反省から1年をスタートさせたいと思います。今年もよろしくお付き合いください。
河北新報角田支局  高田 瑞輝 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
 年の瀬、隣の丸森町で「政権交代」が起きた。新人が現職を破った町長選について、詳しく触れるつもりは毛頭ない。選挙期間中、解説や読み物といった形で本紙記事で書き尽くしたと思っている。週刊誌的な話題以外、取材で蓄積した材料は出し切った。ここではあくまで「一般論」として地方選挙取材の一端を紹介する◆選挙といえば、まずは各陣営の事務所。記者はどちらにも遠慮なく出入りできる数少ない存在だ。相手陣営の情報をつかんでいると思われているので大抵、歓迎される。もちろんこちらとしても、目当てにされている情報を簡単に横流しできない。のらりくらりと話題を変え、自分の見方を少しだけ披露しつつ、新しい情報を見つけて帰る。それができれば訪問の成果は大きい。事務所の雰囲気もチェックしたい要素だ。大勢の人でにぎわっている事務所が良いとは限らない。外回りを一生懸命している陣営なら、事務所内に運動員は少ないはず。いすを温めているだけの人がたくさんいても、票には結び付かない。人が多いことと活気があることは別だ◆街頭や個人演説会などでは、聴衆の動きや表情に注目している。熱狂的な支持者か、投票を迷っている人か、相手陣営から聞きに来ているスパイか、見ていれば何となく分かるものだ。候補者の地盤と敵地、草刈り場のような中立地域それぞれで見るのも参考になる。そして最も肝心なのが各陣営の票読み。意図的に少なく見積もった厳しい票読みをする陣営があれば、楽観的もしくは強気なデータを披露する陣営もあるので厄介だ。選対幹部たちと駆け引きをしながら、自分なりに実態に近い数字を終盤までに算出する◆考えてみれば、(期日前投票を除いて)まだ誰も投票していない段階なのに、票が「動いた」とか「リードしている」とか、そもそも票を「読む」なんて、本来はおかしな話なんだけれど。無党派層の増加も予想をより困難にしている。それでも有権者の思いを探り、風や政治潮流を意識して、当落の見通しをつける記者の仕事がなくなることはないだろう。勝ち負けを外さないにしても、得票差までピタリと当てるのは至難の業だ。候補者本人ほどのプレッシャーはないものの、自分の中で出した結論が正しいのか、いつも不安を抱えながら開票作業を見守っている。さて次は4月の県議選だ。