2010/9/1UP


紫煙よさらば

 自分にプレッシャーをかけなければならない時が、ついにやって来たようだ。大幅なたばこ増税が1カ月後の10月1日に迫り、さすがに禁煙から目をそらせなくなってしまった。紫煙とは10年以上の付き合いで、1日2箱吸うほどのヘビースモーカー。パソコンを前にして原稿を書く時は、いつも相棒を手放せないでいる。ニコチンが切れかかると、なかなか文章が浮かんでこない。付けては消し、消しては付けを繰り返す。自分でも分かっている。完全に病気なのだ◆たばこ漬けの生活にさよならを告げるのは健康上の理由もあるが、ばかばかしくなったからというのが本音である。たばこは1998年以降、1本1円程度の増税が3回あった。私が吸う「マイルドセブン」は買い始めたころ、1箱220円だったと記憶する。10月の増税で現在の1箱300円が410円になる。2箱買うとすれば、値上げ幅だけでかつての1箱分に匹敵し、家計への影響も無視できなくなる。小幅であれば「ちょっとの負担増だからつい続けてしまった」という喫煙者が相当数残ると想像できる。そこにつけ込み、狙い撃ちしているような国の小ずるさをこれまでも感じていた。今回は100円程度上がるが、「増税を機に禁煙する派」と「それでも吸い続ける派」の微妙なバランスを考えて、税収が増えると判断したのだろう。本当に国民の健康を案じるなら、1箱1000円位にする必要があるのではないか。だらしのないニコチン依存者が禁煙に踏み切るのは、国に対するささやかな抗議と受け止めてもらいたい◆時代の流れで分煙が進み、少数派になりつつある愛煙家はどこへ行っても肩身の狭い思いをしている。煙が充満した小さな喫煙所で大人が寄り添っている姿は、吸わない人にとって異様な光景に映るだろう。それでも数人の“仲間”が集まる部屋はちょっとした社交場になる。記者の立場で言えば、自治体や警察の幹部らと雑談できる貴重な機会だ。愛煙家同士の妙な連帯感も自分を後押しして、まともに禁煙に取り組んだ経験はこれまでなかったといっていい。妻が妊娠中の時や娘の前、マイカーの中などで遠慮するのが精いっぱいだった◆先日あった会合で、角田市内の病院の院長から「ニコチンパッチだけでなく内服薬もある。禁煙して浮いたお金で自分にご褒美を与えるのも長続きするこつ」と話を聞き、禁煙外来もあると勧められた。やめるなら今が最大のチャンスであるのは間違いなさそうだ。意思が強いほうではないので、妻からも「くらし面あたりに禁煙体験記でも書けば一石二鳥よ」なんて冷やかされている。三日坊主にならぬよう、本欄の読者にも決別宣言の証人になってもらおうという魂胆である。もし10月以降、たばこに火をつける記者の姿を見掛けたら、「『あんふぃに』読んだよ」と注意してもらえるとありがたい。