2010/6/1UP


宇宙と角田

 角田と言われてイメージするものは何だろう。梅、米、菜の花、阿武隈川、高蔵寺、ずんだ、グライダー、ウオーキング…。挙げると切りがないが、「ロケット」「宇宙」というキーワードを思い浮かべる人も多いはず。言わずもがな、宇宙航空研究開発機構(JAXA)角田宇宙センターが市内にあるからで、「明日の宇宙を拓くまち」が角田の“売り”の一つに違いない◆173万平方㍍の広大な敷地を持つ宇宙センターでは、最先端の国産ロケットエンジンの研究開発を中心に、技術の向上に日々取り組んでいる。いや、取り組んでいるらしい。正直なところ、JAXA職員から研究内容について丁寧に説明を受けても、文系出身者としては「インデューサ?キャビテーション?」と何のことやらちんぷんかんぷん。世界水準の施設が地元にあることは誇りにしていいと思うのだが、種子島宇宙センターのようにロケットの打ち上げを行っているわけではないので、市民としてはいまいち実感がわきにくいのかもしれない。H2ロケット実物大模型やスペースタワーがそびえる台山公園を、宇宙センターと混同している人も少なからずいる。せっかくの資源があるのに何かもったいないなという思いが、これまで心の奥底にあった◆地元の人たちが宇宙に思いをはせる機会が意外にも少ないと感じていた矢先、今年の「宇宙っ子まつり」がそんな気持ちを吹き飛ばしてくれた。JAXAとは直接関係なく、あくまでも市や商工会、観光物産協会などが観光の側面から盛り上げるまつりは近年、マンネリ化しつつあったが、今年は違っていた。国際宇宙ステーションを描いた地上絵、会場のあちらこちらに出没するブルースーツを着た人など新しい試みが次々取り入れられた。何より「宇宙に近い街」であることを子どもたちに感じてもらおうという気概が、実行委員から伝わってきた。JAXAの施設は宮城県内で角田にしかない。近隣の市町では絶対に真似のできない催しであり、来年以降も工夫を凝らして子どもたちの目を輝かせてほしい◆ビジネスとして航空機や宇宙産業への参入を模索する動きもある。県内企業が自社技術を転用しようと、JAXAに売り込みを図る技術展示会が先日開催された。トヨタ自動車関連企業の集積が進み、自動車産業がにぎやかな県内だが、航空宇宙分野への視線も熱い。研究開発機関と地元企業が連携を深めれば、宇宙にちなんだ街おこしはさらに進むのではないか。「角田出身の宇宙飛行士が誕生」「地元製部品を使ったエンジンを積んだロケット打ち上げ」。気が早いかもしれないけれど、そんな記事を書ける日が来ることを夢見ている。