2026/4/1UP


持っていた記者

 映画「大統領の陰謀」は、アメリカ大統領のスキャンダル「ウォーターゲート事件」を暴いた新聞記者たちが主役。学生時代に鑑賞し、巨悪と対峙するダスティン・ホフマンらが演じる記者たちに憧憬の念を抱いたものです。そして、ネクタイを緩ませて取材する粗野な雰囲気が、権力に縛られない自由さを感じさせて魅力的でした。 4年間の支局生活で自分はどうだったのか。幸いなことに大きな事件や災害はなく、図らずも楽しく過ごさせていただきました。しかし、ついぞ「巨悪を暴く」記事を書くことはありませんでした。まねできたのは自由な格好。そもそもスーツを着ていなかっただけなのですが…。 大事件や災害はあってはならないものの、記者をなりわいにしていると潜在的に日々「何かないかな」と考えてしまいます。巡り合わせもありますが、不思議と行く先々で「何か」と出会う記者がいます。いわゆる「持っている記者」です。 そのような意味で、私は「持っていない記者」でした。そして、スキャンダラスな事件に出会わなかったことについては、ただただ取材力がなかったと言われても致し方ないと反省しています。 一方で、本当に人に恵まれた支局だったと感じています。急な取材依頼にも嫌な顔一つせず対応していただいたことや、惜しみなく情報提供・協力をしていただいたことは一度や二度ではありません。たくさんの方々と仕事を抜きにしたお付き合いもさせていただきました。まさに「地元紙記者冥利」につきる日々でした。 ここまで書いて気付かされたことがあります。多くのご縁いただいた私は「持っている記者」だったのではないかと。たくさんの支えがあって初めて私の仕事が成り立っていたことを、改めて痛感しています。 末筆ながら、この度の人事異動で角田支局を離れることとなりました。4月からは仙台市の本社に勤務する予定です。この4年間、取材先で度々「あんふぃにの藤井さん?」と声を掛けていただきました。見苦しい拙文もあったかと存じますが、多くの励ましのお言葉をただいたことが本当に力になりました。この場を借りて感謝申し上げます。第2の故郷角田で、またいつかお目に掛かれることがあれば幸いです。
2026.3 藤井宏匡
商店街活性化へ議論がなされたミーティング