2021/8/1UP


まちをつくる顔

 「宇宙のまち」角田市が、「宇宙人」の力を借り、移住促進PR動画を制作しました。市の公式ユーチューブで公開されています。頭のてっぺんからつま先まで全身シルバーの宇宙人たちが市内の名所を巡り、地域の特色を知るという設定です。昨年11月にあった撮影の模様を取材していました。宇宙人役を務めたのは一般市民ですが、顔も衣装で覆われています。表情も声もありませんが、ユーモラスな動きで宇宙人を愉快に演じていました。移住促進ばかりではなく、観光PRにも十分活用できる内容です。  ユーモラスな観光PRと言えば、動画の撮影とちょうど同じ時期にあった伊具高の創立100周年記念式典で記念講演をした方もそうでした。青森県十和田市のまちおこし団体「十和田バラ焼きゼミナール」代表で、バラの花をあしらった派手なタキシード姿。フランス貴族風の振る舞いで壇上から「ラビアンローズ(バラ色の人生を)」と叫んでいました。バラ焼きとは大量のタマネギと牛肉をたれで焼いたご当地料理で、花のバラと掛けています。活動が実り、2014年には、全国のご当地グルメが集う祭典「B-1グランプリ」で1位のゴールドグランプリに輝きました。  団体の代表はユーモラスかつインパクトあるキャラクターで、新聞やテレビの全国放送などメディアにも多く出演しています。講演では十和田市の活性化に向けた熱意を力強く語っていました。伊具高がこの方を記念講演に招いたのも、将来のまちづくりを担う生徒に何らかのヒントを得てほしいと期待してのことだと思います。  角田と丸森の取材を担当していて、かねて気掛かりなことがありました。角田は文化や風土を記事で紹介する機会が多いのに、人を主役に記事を書くことはそこまで多くありません。丸森はその逆で、自然や歴史より人の営みに特色がある地域ニュースが多いと感じています。角田にも特筆すべき人はいるはずですが、市民性なのでしょうか。  十和田バラ焼きゼミナールの活動に目を向けると、食や文化などと同等に、人の個性も地域活性化への大きな起爆剤になることが分かります。そうした点では、角田の宇宙人が顔も声も出せないのは、ちょっぴり惜しい気がしました。もちろん、移住促進PR動画は、角田の名所が主役なので宇宙人は脇役的存在でも構わないと思います。それでも、独特の言葉とパフォーマンスでまちの魅力を発信できる「顔」が現れるのを期待します。角田はもっと面白くなるでしょう。



昨年11月に道の駅かくだであった
移住促進PR動画の撮影